破魔弓の由来と飾り方、飾る期間と処分方法について

最終更新日 2024年3月27日

破魔弓(はまゆみ)」とは魔除けや厄払いのお守りのひとつで、男の子の元気な成長を願うお正月の縁起の祝い物です。
神社で見かける「破魔矢(はまや)」は知っているけれど「破魔弓」は知らない方が多いと思いますが、古来から男の子の初正月には破魔弓を、女の子には羽子板をという風習が伝えられています。
初正月とは赤ちゃんが誕生してから初めて迎えるお正月のことですが、この時期は「鬼門」とも呼ばれていました。
日本では旧暦の12月から1月の間は十二支による暦の上で「丑・寅」にあたり、これが鬼門と呼ばれる理由です。
まだ生命力が弱い赤ちゃんがこの鬼門の時期を無事に過ごせるようにという願いと厄落としの意味を込めて贈られました。

破魔弓を贈る風習の由来

また、破魔弓を贈る風習の由来にはいくつかありますが、最古のものでは飛鳥時代までさかのぼると言われています。
当時の天智天皇時代のお正月には、弓で的を射る「射礼(じゃらい)」や「大射(たいしゃ)」と呼ばれる儀式が行われていました。
この射礼や大射の儀式に使われた的はワラ縄で円座のようなもので、この的を「はま」と呼びます。
そこから「はま」は弓矢で射るための的、もしくは射的の競技を意味する言葉となり、後には儀式における弓矢の意味と役割から「破魔(はま)」の字を当て、それぞれ「破魔弓」「破魔矢」と呼ぶようになったそうです。
この弓を男の子の初正月に贈る風習は武家社会で生まれました。
戦国時代には戦勝を祈願して弓矢などを神社に奉納していましたが、その際に神社からいただいた模擬の弓矢を戦場での「お守り」としており、そこから武将の家に男の子が誕生した際には破魔矢と弓と贈るようになったと言われています。
もうひとつの説としては、宮中で男の子が生まれたときに行われていた「鳴弦の儀(めいげんのぎ)」も由来のひとつとされています。
鳴弦の儀とは鬼を退けるための儀式で、矢を使わずに弓の弦を引いた時の音を四方へ発するのが大きな特徴です。
この弦を弾く音は鬼が嫌う音とされており、鬼が起こす魔気や邪気を祓うとして鳴弦の儀は行われてきました。
現代の皇室においても鳴弦の儀は重要な儀式のひとつとして受け継がれています。

破魔弓の基本形

そのような歴史と由来を持つ破魔弓の基本形は左右に置いた弓2本の中央に沓を置き、前に矢を数本差し下部に大きな雁股矢尻型の金具を取り付け、さらに漆塗りの飾り板を支柱として取り付けます。
昔から妻の実家から贈られるという風習がありましたが、最近では夫と妻の実家同士で費用を折半して用意することも珍しくなくなりました。
また、若い夫婦の場合は一戸建て住宅ではなくマンションやアパートなどに住んでいるケースも少なくありません。
弓のサイズがコンパクトなものから本格的なものまでたくさんの種類があるため、自分たちの生活空間に最適なサイズを選ぶということから、実家からではなく男の子の両親が自分で選んで購入するというケースも増えてきています。
本来は木製で無患子を使って縁起をかついだものですが、最近ではプラスチック製も増えてきているのが現状です。
飾りとして付いている羽も、天然の鳥の羽を使っているものもあれば人工的な素材を羽に見立てて作っているものもあります。
それぞれに見た目も違いますしサイズにもいろいろあるため、家のどこに飾るかをよく考えて納得のいくものを選ぶことが大切です。

破魔弓はいつ飾るのか?

次にいつ飾るかについてですが、前述の通り基本的にはお正月に飾ります。
お正月以外でも男の子の節句である5月に節句人形などと一緒に飾られることもありますが、一般的には12月中旬から飾り始めて1月15日にはしまうのがよいとされています。
逆に飾り付けによくないとされているのは大みそかである12月31日と12月29日です。
大晦日に縁起物を飾ることは一夜飾りと言われており、12月29日は苦立てといわれて古来から忌み嫌われている日であるためなるべく避けておいたほうがよいでしょう。
1月15日にしまうのが良いとされる理由は、小正月とされる1月15日には「どんど焼き」や「左義長」と呼ばれる火祭りを行なう地域があり、この頃までにしまっておかないと逆に縁起がよくないとされています。
飾り方は人目につきやすい場所で凶方向や逢魔の方向に飾るのが習わしです。
現在の住宅ではあまり見かけませんが、昔の住宅では床の間によく飾られていました。
現代では魔除けの意味を込めて飾ることが主な目的となっているため、人目につく場所であれば特にこだわる必要はありません。

まとめ

飾る年齢については昔は男子が元服する数え年で15歳までとされていましたが、現在では成人する20歳までとしている家庭が多いようです。
不要になり処分したい場合は、粗大ごみに出すなどはもってのほかです。
成長を見守ってくれていた縁起物ので、処分するときにも風習を守り、他の正月飾りと同様に神社などで焼いてもらうことをおすすめします。